第20章 01
夜9時。
カルセドニーの貨物室の片隅で、護がコンコンと鉱石で源泉石を叩いている。
そこへカルロスがやって来ると、「…練習もいいけど、寝不足になるなよ。明日は3時起きだぞ。」
護「うん。」
カルロス「ジュリアさんとアキさんは2時起きらしい。皆にメシを食わせなきゃいけないしな。ウチの船の朝飯は、ジュリアさんから頂いた、レンジでチンするだけの弁当だ。…レンチンのおかずは、便利だから私もやろうと思ってたんだ。今度ジュリアさんにレシピとか教わろう。」
護「うん。」と言いつつコンコンと鉱石で源泉石を叩き続ける。
カルロス「…船長はもう寝てしまったぞ。お前もそろそろ寝ろよ。」と言って貨物室から出て行く。
護「うん。」
そして翌朝4時近く。
黒船の採掘準備室に、メンバー達一同が集い始める。
そこへタラップから悠斗が「おはようございまーす!」と言いつつ姿を現す。
ジェッソ「おはよう。」
続いて穣が「メッチャお早うござんす!外まだ真っ暗だぞ。」
マリアも「黒船に出勤って変な感じ!おはようでーす!」
健とオリオンと透も「おはようございます」と言いつつ、タラップを上がって採掘準備室に入って来る。
レンブラント「元気な赤い髪が居ないな。」
穣「マゼンタ君はアンバーでお留守番!…アンバーズはどこに並ぶ?」
ジェッソ「黒船二列でアンバーも横に適当に二列。」
そこへ階段室から総司がネイビーと一緒に入って来て「アンバーは全部で何人?」
穣「俺を入れて6人。」
ネイビー「あらマゼンタ君、来なかったの?」
穣「人気者だな、連れて来るか?」
ネイビー「いやいいわよ。」
悠斗「マゼンタ君、俺も怪力だったらーって嘆いていた。」
ジェッソ「怪力でなくても別にいいけど今は、留守番だな。」
総司は並んだ一同の前に立つと「カルセドニーはまだなのか。」
上総「今、船から出たからすぐ来る。」
少しするとタラップを上がる足音がして、黒船の制服を着たカルロスとアンバーの制服を着た護が姿を現す。
カルロスは黒石剣を入れたホルダーとA4サイズのホワイトボードを持ち、護は白石斧を持っている。
カルロス「久々にキチンと制服着て来たぞ、黒船採掘監督バージョンだ!」
上総「おぉ!懐かしい」
護「制服にネクタイしただけじゃん…おはようございます!」
ジェッソ「ネクタイは大事。」
続いて黒船船長の制服を着た駿河がタラップを上がって採掘準備室に姿を現す。その瞬間、一同思わずハッとした表情になって動きを止める。
駿河「おはようございます。…なんかこの制服着ると、黒船船長時代の感覚になるなー…」
一同「…。」何となく暫し駿河を見つめる。
穣「…懐かしいものを見た…。」と呟く
ジェッソ「…やっぱり貴方は本当の…黒船船長…。」
総司「…ですよね。」
リキテクス「…それ、似合いますよ。」
駿河「まぁこれ元々俺の制服だしな。」と言って人工種用の船長制服を着た総司の隣に立ち「人工種の黒船船長と、人間の黒船船長が揃った。」と言うと、若干怒りを込めた表情で「この状態を管理に見せてやりたいね。」
一同「…。」
駿河「俺と総司の間、ここが時代の変わり目。俺が、最後の人間の黒船船長だから。総司から先はもう人間の黒船船長は居ない。…だって黒船は本来そういう船だから。仮にもし人間が船長をやるとしてもそれは、人工種が選んだ人間の船長であるはず。あくまで主体は人工種、それが黒船。まぁでも今日は、俺が臨時に今だけ船長します!」
一同「…。」神妙な面持ちで駿河を見つめる。
駿河「…あの。皆…?」
ジェッソ「…その姿を見ると、色々な事を思い出す…。」
レンブラント、しみじみと「…最後の、人間の黒船船長か…。」
駿河「だってそれが俺の望みだったんで。…ちなみに朝礼もう始まってるん…?」と総司を見る。
総司「貴方やって下さい。」
駿河「俺、昔どんな朝礼してたっけな。」
そこへ穣が「…ちょっと提案なんだが、護!せっかくだからお前、ネクタイしない?」
護「は?」
穣「だってカルロスが採掘監督だった時、お前もアンバーの」
護「いや俺のアンバーの採掘監督時代は暗黒すぎて思い出したくねぇー!」
穣「でもさお前がアンバーに来てドンブラコしたから今があるんだよ、皆。」
護「み、皆?」
穣「うん。お前がイェソドに居たからカルロスが逃げた訳だし。」
護「俺は単にミスって落ちただけだよ…。ターさんに拾われなかったら」
穣「何でもいいけどあの時から全てが動いたんよ。俺がどんだけ頑張ってアンバーで外地に出たりしても、何にも変わらんかったのに。…まぁ護が来たから変わらん訳でもないか。とにかくあの時、黒船が駿河船長とカルロス監督で、お前がアンバーの」
護「それ勘弁して…あの時の自分は暗黒すぎて」
穣「そんな事言ったらカルロスも昔は相当だったぞ…。」
ジェッソ「うむ!」
カルロス「そこで力強く同意されても…。」
穣は「まぁとにかく」と言いつつ自分のネクタイを外すと護の前に突き出して「これ着けろ。コスプレだ!」
護「…。」ちょっと黙ってから渋々と「分かった…。」とネクタイを受け取る。
駿河「…では朝礼を始めます。皆さん、おはようございます、元気ですかー!」
アンバーの一同、元気よく「はーい!」
黒船メンバー、やや意表を突かれたように「…はい。」
総司、若干苦笑いで駿河に「貴方そんな朝礼してたっけ?」
駿河「剣菱船長を見習ってみました!」
穣「いいことだ!」
駿河「本日はこれから、等級8の源泉石を採りに行きます。道中レーダー無し視界ゼロ暴風という凄い状況なので、人型探知機と弟子の皆さん頑張って下さい。操船は人工種の黒船船長です。現場に着いたら…誰の指示で動くんでしょうか。カルロスさんは雲海切りか。」
カルロス「勿論あっちの監督の命令で動くんだ。」とジェッソを指差す。
するとジェッソが「んー…」と悩み「源泉石について最も詳しいのは護さんなので、護さんの指示で動きます。」
護「!」ビックリして「なんですと…。」
カルロス「お前カルセドニーの採掘監督だろう!」
護「だってそれカルさんしか居ないやん…。まぁいいや頑張ります!」
駿河「ではそういう事で。皆さん宜しくお願いします、出航します!」
暫し後。
黒船のブリッジの操縦席には総司、船長席には駿河が座る。そこへ上総とマリアとカルロスが入って来る。続いてネイビーと穣とジェッソが船長席の隣に立ち、通路には恒例の若干の野次馬が。
カルロスは床に黒石剣を置くとホワイトボードを手に取り、図を描き始める。
上総それを見て「…いつもそれ使ってるんですか?」
カルロス「うん。」
上総「俺とマリアさんはタブレット使ってますけど」
カルロス「そんな文明の利器は使わん。」
すると駿河が「そのホワイトボード、ケセドの街のバザーで、カルさんがクジ引いて3等で貰ったんです。」
カルロス「気に入ったから使ってる。」
そこへリリリリと緊急電話が鳴る。駿河、受話器を取って「はい駿河です。」
剣菱『剣菱です。そろそろ出発?』
駿河「はい。今、連絡しようと思ってました。」
剣菱『アンタの大事なカルセドニーは盗まれないように見張っててやるから安心してくれ。頑張れよー!8の柱、採ってこーい。』
駿河「まぁ盗む人は居ないと思うけどウチの船、宜しくお願いします。では、行ってきます!」と言って受話器を置く。
カルロス、ホワイトボードに描いた図を総司に見せて「まずは、こんな感じだ。」
総司「了解。」
上総「俺の図より見易い…。」
駿河「では出発しますか副長…じゃなかったぁ!」
総司「いいですよ副長でも。…発進します。」
黒船は上昇すると、真っ暗闇の中を峡谷方面に向かって前進し始める。
その頃、黒船の採掘準備室では悠斗やレンブラント達が再び鉱石で源泉石を叩いて感覚を高めていた。
昴は鉱石を源泉石に当て、鉱石にひび割れを入れると、続いて源泉石に手を当てて、パキンとひび割れを入れる。
オリオン、それを見て「おお…。」
昴「うん、正確に割れるようになってきたぞ。」
オリオン「俺ももっと頑張ろ。」
レンブラントも鉱石で源泉石を叩く、2回コンコンッと叩いただけで、鉱石が割れる。
護、それを見て「いい感じ。」
レンブラント「感覚が掴めてきた。むしろ硬いのより繊細な奴が分かりやすい。」
護「硬いと無意識に筋力入っちゃうからねぇ。力んじゃって」
レンブラント「うん。でもこの鉱石を使う方法だと加減が分かって良い。…お前よくこれ考えたな。」
護「最初全然採れなくて、どうやって採るか悩んで散々考えてたら、たまたま発見した。」
レンブラント「執念だな。…8も執念で採ろうぜ!」
黒船は暗黒の雲海に包まれた、強風吹き荒ぶ峡谷を飛び続ける。
カルロス、ホワイトボードの図を示しつつ「今ここ。…しかし全然揺れないな。」
総司「黒船ですから。」
駿河「操船が上手いんです。…ただ俺、カルセドニーの操船だったら総司君に負けないけど。」
総司「そりゃーね。」
穣「何を張り合ってるん…。」
カルロス「昨日はホワイトボードに描くのも大変な位、揺れた。」
総司「まぁこの風速の中をカルセドニーで飛ぶのは相当大変ですよ…。」
カルロス「同じ中型の癖に3級と2級でこんなに違うとは!」
駿河「しかもカルセドニーは単なる貨物船だからね…。黒船は採掘船だから頑丈だし、強力な浮き石付いてるし。」
カルロス「つまり仮に黒船と正面衝突してもぶっ壊れるのはカルセドニーか。」
駿河「そして総司君から損害賠償請求されるんですよ貴方が。」
カルロス「恐ろしいからやめておこう。」
駿河「って貴方、衝突する気だったんか!」
総司笑って「あのー…。」と言うと「昔、ブリッジでそんなに喋る方々でしたっけ?」
カルロス「どうだったかな。」
ジェッソも笑って「ほんと、よく喋る…。」
上総「昔はもっと静かだった!…俺、喋るなって注意された事ある。」
駿河「…この人型探知機がですね…、機嫌がいいと、よく喋るんですよ。」
カルロス「とりあえず今ここ。」とホワイトボードの図を示して「昨日は超絶多忙だったのに今日はヒマだな…。」
駿河、総司を指差し「…ちなみにこの副長、涼しい顔して操船してますけど結構大変なんですからね。」
総司「まぁそこそこに。」
カルロス「本当の試練は6の先だ。」
駿河「この視界ゼロの暴風の中で着陸したりUターンした俺の苦労を知れー!」
総司「分かります、分かります。」
空が徐々に薄っすらと明るくなり始め、暗黒の雲海が少しずつグレーに変わる。
カルロス「さて…。あと5分位で6の所だが。」と言ってホワイトボードの図を一旦消すと、再び図を描きながら「6の先に狭い所があってな…。」
すると探知を掛けていた上総が「ほんと難所だ…こんな所行くの…。」
カルロス「な?」と言うと「雲海切りできたら楽なんだが…。」
駿河「飛行中に雲海切りは諦めて下さいね。着陸して雲海切りならいいですけど。」
総司も「結構な速度で飛んでるので、貴方が風に吹き飛ばされてぶっ飛んでもいいなら。」
カルロス「図に描くのがメンドイ所だから視認できたら楽なんだが死にたくはない。」
駿河「言葉で説明という手が。…そもそもまだ暗いから雲海切っても視認性はあんまり…。」
カルロス「んー…。」と言って悩みながら図を描いていたが「…これを見せたら逆に混乱するな…。」と言い「仕方がない、言葉で説明する事にしよう。とりあえず降下。下がる。」
総司「はい。」
カルロス「もう少し下がる…そこまで!…うん。そこでそのまま暫く直進。」
上総「…次、上がって右曲がって左ですよね?」
カルロス「うん。その先どうしようかな。」
上総「何なんでしょう、この横から生えてる石。」
カルロス「知らん。護なら分かるかもな。窓から見えれば。」と言ってホワイトボードに描いた図を総司に見せると「こんな風に、左右の壁からランダムな向きで巨大な結晶みたいなのが沢山生えてる。その間をくぐって行かないといけない。」
総司、若干唖然として「なんだと…。」
駿河やジェッソ達もその図を見る
穣「なんかあれだな、昨日最初に8採りしたとこの、左右に沢山生えてるバージョンみたいな。」
ジェッソ「そんな感じだな。」
ネイビー「視界ゼロでこの間を飛ぶの…?」
その時マリアが「あ…若干雲海が、所々薄くなって、時々ちょっと見える。」
船窓に時々うっすらと、周囲の景色が一瞬見えては消える。
駿河、一瞬見えた黒い岩壁に「すぐ近くに岩壁が…。」
マリア、探知しつつ「今とても狭いとこ飛んでます。」
カルロス「そろそろ6があった所だ。昨日着陸した所から岩山1つ隔てた右側だけども。…ここで上昇、上昇…。…そこまで!」と言うと「…2時の方向へ…。ここで11時へ。」
マリア、思わず「カルロスさんの指示って凄い的確…。」
上総「俺、船の速度読んでもここまでタイミング合わせられない。」
カルロス「だって何年、黒船で探知やったと…。」と言うと「さてここから真剣勝負だ。かなりテンポ早く細かく指示するからその通りに飛べよ、副長。」
総司「はい。」
上総「え、まさか。」と言ってカルロスを見る。
マリア「このまま突っ込むの?!」と驚く。
カルロスは「うん」と言い、目を閉じてバンと探知エネルギーを思いっきり上げる。カルロスの周囲が若干青く光る。
カルロス「突入まで3、2、1、入った、…1時、2時、…3時、2時、3時、3時に切ったままで下、下がる…そこまで。そこで直進。やや上昇。」
カルロスの指示通りに必死に操船する総司。
黒船は、殆ど真っ暗な狭い空間を縫うように飛んでいく。
時折、左右の壁から何本も生えている巨大な黒い結晶の影が見える。
カルロス「…9時へ。10時、11時、10時、上昇、やや9時…で、11時。そのまま直進…速度上げる。」
マリア「抜けた!」と同時に
上総も「抜けた、凄い!」と感嘆の声を上げる。
マリア「これ見えてたら凄いのに!皆に見て欲しかったー!」
上総「俺もこんなのが出来るようになりたいー!」
カルロス「こんな難儀な所でも、あんまり船が揺れないという…。」
総司、必死に操船しつつ「く…。…意地でも揺らさない。」
カルロスは探知エネルギーを落として目を開けると「あとは暴風に負けないように暫し直進する。だんだん拓けた場所になるから風も治まって来るんじゃないかな。…しかしさっきの所、今は向かい風だからまだしも、帰りは追い風で煽られるのかー…。」
総司「大丈夫です、何とか船を安定させます。…って俺じゃなかった。」
駿河「俺の出番です!積み荷も入るし、安定させ易くはなると思う。」
総司「…帰りもやりたい…。」
駿河「俺にもやらせろ!ここまで船長してやったんだから!黒船船長に戻れー!」
総司「ハイ。」
ジェッソ「…操船マニアな…。」
ネイビー「操縦士なんてそんなもんよ。私もやりたいもん。…今は船長二人に譲ってるけど。」
駿河「ちなみに俺はそのうちイェソドの操船免許取るんで!そしたらまた難所チャレンジする。」
ジェッソ「え、イェソドの?」
ネイビー「有翼種の船のですか?」
駿河「うん。」
総司「いいな俺もその免許取りたい…。」
駿河「じゃあ総司君がイェソドに免許取りに行ってる間、俺がまた臨時の黒船船長をしよう。」
ネイビー「その免許、どの位で取れるの?」
駿河「ワカラン。何せ俺は人間なので!免許くれるのかなぁ。」
ネイビー「あー…。」
総司「ジャスパー側とは真逆ですね。」
駿河「そうだけど別に俺は人間だからって有翼種に責められたり蔑まれたりしないし。人工種の話をガン無視するどっかの管理の人々とは違って有翼種は人間の話ちゃんと聞いてどうしようかって考えてくれるし。」と言うと「とりあえず教本だけは買ったんで勉強はしてるけど。…俺のイェソドの銀行口座開設も凄い苦労したんで…。まず住所が!ジャスパー側の戸籍が保証に使えない。だってイェソドは人間とは和解してないし。」
ネイビー「なるほ…。」
駿河「でもカルさんと護さんはイェソドに口座あるし、カルセドニー船長の俺に口座が無いと支払いとか困るんで、イェソド側も困って、しゃあないので周防先生にお願いしてSSFの住所を俺の本籍地に貸してもらう事になった。カルさん繋がりって事で、保証に…。だから護さんと俺とカルさんの3人は本籍がSSFで現住所がターさんの家。」
ジェッソ「そんな事になってたんですか。」
上総「じゃあ駿河船長ってSSF生まれになってるのかー。」
駿河「イェソドでのデータ上はね。」
カルロス「さて。そろそろ8の場所だ。高度落として…そこでそのままキープ。」
総司「はい。…風が落ち着いて来たから、もう少し速度を落とせば雲海切り出来ますよ。」
カルロス「よぉーし。」と言うと「ここからのナビは弟子に任せた!私は雲海切り職人になろう。」
上総「おぉ!」
マリア「了解です!」
カルロス、上総に「私の探知道具を預かっといてくれ」とホワイトボードを上総に渡す。
上総「これ探知道具だったんですね…。」
カルロスは床に置いた黒石剣が入ったホルダーを手に取り、ショルダーベルトを肩から斜め掛けにかけて黒石剣を背負うと「船長、護監督にそろそろ出番だと。あと風使い3人に上部ハッチに来るように連絡を。」
駿河、カルロスに耳に着けるインカムを差し出しつつ「カルさんこれ着けて。」
カルロスがそれを受け取って耳に着けている間に駿河は受話器を取って「船長です。そろそろ現場に着きますので護監督、出番ですよ。あと風使いの皆さんは上部ハッチへ。」
するとスピーカーから護が『了解です!』
カルロス「じゃあ行って来る。」と言い、ブリッジから出て行く。
空が徐々に明るくなり、黒とグレーの雲海が、殆ど白に変わる。
甲板に出る上部ハッチの下で待機しているカルロスとメリッサ、その階段下には夏樹と透が居る。
インカムから連絡が入る『総司です。ハッチ開けていいですよ、思う存分、雲海切りブチかまして下さい。』
カルロス「了解。…じゃあ開けるぞ。」
カルロスがハッチを開けるとすぐにメリッサがバッと外に出て風を安定させる。と同時にカルロスと、夏樹、透が甲板に出る。カルロスは船首側に歩いて行き、その背後にメリッサ、間隔を置いて透、そして船尾側に夏樹が立ってそれぞれ風を操り安定させる。
一方、ブリッジには護が駆け込んできて「雲海切った?…あ、まだか。」
駿河、護に「黒船のインカム着けてる?」
護「うん、朝礼の後、穣さんから渡された。」と言ってふと駿河を見て「うわ、マジで黒船船長。」と驚く
駿河「ってどういう…。」
護「だって俺、総司船長の黒船しか乗った事ないんで。」
駿河「あれ?…そうだっけ…?」
護、駿河を指差し「なんかそこに座ってるとマジで黒船船長だなって思う。白船船長の時と変わるよね!」
駿河「…そうかな。」
その時、甲板の上のカルロスがブリッジのすぐ手前で立ち止まり、黒石剣を構えるとバッと前方に雲海切りをすると同時に前方の雲海が拓けて夜明けの空と、岩山に囲まれた世界が広がる。
護はブリッジの船窓からその光景を見て「カルさん切った。現場は…ああ、あれか。」
マリア「前方11時」
階段のように段になった岩山の、中腹の平地部分の崖際に、白く光る壁と柱が見える。
護「なんか船が着陸し易い所で良かった。」
総司「やっぱ風使いが出ると格段に操船し易くなるなぁ。これ方向転換ラクだな。」と言い、「…護監督、船は方向転換してから着陸しますので。」
護「ほい。採掘メンバーはとっとと降ります。」
上総、前方を指差し「あっ、大きいのがある!」
マリア「でっかいのが!」
護「まぁ何でもガッツリ採ってやるわい!じゃあ採掘する人、行きますよ!」
穣「へーい!」
ジェッソ「ほーい!」
護「行ってきまーす!」とブリッジを出て行く。
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