第20章 02
黒船が源泉石のある場所の手前に到達すると、船底の採掘口が開いて斧を持った護や、ジェッソと穣、コンテナを持った採掘メンバー達が飛び降りて来る。護は着地すると地面と崖の始まりの境目から生えている一際大きな源泉石柱の所へ走って行く。石柱に到着すると、太く大きな柱を触って上を見ながら「凄い…。」と呟いてから、ポーチからカメラを出して源泉石柱を含めた辺り一帯の写真を撮って、撮れたか確認する。続いて護を追ってやってきたジェッソと穣もカメラで写真を撮る。
その間に黒船は少し行った所で上空停止し、その場で方向転換を始める。
護、一同に「まずこれを採る!」と言いつつ腰のポーチから鉱石を出して柱をコンコンと叩く。
ジェッソ「了解です監督!」
護「これ本気で9に近い8、っていうか俺が今まで見た中では一番良い!キッチリ採ったら凄いぞ!」
穣「9ではないの?」
護「等級9はイェソド山の頂上の源泉石に付けられる等級だから、それ以外の所は9でも8なんだよ。そもそも9の石を9のまま採るのは至難の業で、絶対8落ちするけどそれでも上物の8、だから9に近い8が、採掘師が採れる最高のもの。」
穣たち「へぇ!」
護「んでも下手に採ったら等級ガタ落ちするからな!ちょいそこで待ってて!」と言って白石斧を持つと、斧の刃を当ててコンコンと叩き始める。暫し真剣にアチコチ色んな所を叩くと、ある所でガン!と叩いてうっすらと薄い切り込みを付ける。「まずここ。…この柱、とんでもねぇ…」と言って溜息をつくと再び鉱石でコンコンと柱の別の所を叩いてから斧を構え、ガンと切り込みを入れる。続いてもう一つ別の所にも同様に切り込みを入れる。太い柱の周囲三カ所、三角形になる位置にそれぞれ切り込みの印が付く。
護がその作業をしている間に、一同の背後に方向転換を終えた黒船が着陸し、採掘口からタラップを降ろす。
護、一同の方に向かって「柱を切りたい人、2名募集!」
ジェッソ「柱は私とレンかな!」
レンブラント、悠斗に「やる?」
悠斗「これ黒船の柱だもん。貴方どうぞ。」
レンブラント「あっ、でも君が切ると、黒船、白船、茶色の船の3隻で切った事になるから、君だ!」と悠斗を指差す。
悠斗「なーるほど!じゃあやります!」
護「じゃあ二人とも、鉱石の欠片を沢山用意して。切る度に鉱石で叩いて確認して切っていく。これ切る間ずっと同じエネルギーじゃないからね、切る度に変わる事があるから!」
ジェッソ、一同の方を振り向き「オーカー!イェソド鉱石!」
オーカー「へいお待ち!ここに箱、置いとくぜ!」とイェソド鉱石を入れた小さなコンテナを石柱の傍に置く
護「俺、ちと壁の方の指示をするから、二人で柱ちょっと切っといて。三カ所出来るだけ均等に。」
悠斗「ほい」
ジェッソ「了解だ!」
護「では壁の方だけど」と言って源泉石柱の背後の光る岩壁を指差し「多分これも8」と言いつつ鉱石で源泉石の壁を叩いて「昴さん!」
昴「はい!」と護の所に駆け寄る。
護「この壁を崩すけど、これ、そこの源泉石柱と繋がってるから」と言って地面の枯れ枝を拾うと「この角度で発破を…」と枝を斜めに持って指示をするが「あー…でも、スマンちょっと待って。俺、以前このパターンで失敗した事があるんで…。ここは人型探知機の力を借りたい。確実に採る為に!」と言いインカムに「船長、カルさんに現場に助っ人お願いしますって伝えて下さい。」
インカムから駿河の声『了解。…って俺が答えてしまったぁ!』
総司『今、俺が黒船船長に戻ったんですが。』
護「どっちの船長でもええわい!カルさん下さい!」
穣「なんだなんだ。」
護「カルさんの黒石剣が役に立つんだよ、こういう時!」
穣「そうなん?」
そこへカルロスが甲板の上から飛び降りて、護達の所に走ってやって来ると「来たぞ!」
護「この壁、そこの柱と繋がってるから、どこまで崩せるか知りたい。」
カルロス「つまり流れを読めと。了解です採掘監督。」と言い黒石剣の先端で壁のあちこちを軽く叩き始める。
黒石剣はキンッ、キンッと高く澄んだような音を立てていたが、ある所でキーンと長い反響音のような音を立てる。
護「まずそこか。」と言うとポーチから赤色のチョークのようなものを出して、それで印を付ける
カルロスは更にキーンという音がする部分を探して壁を地面近くまで叩き続ける。護がその、音がした部分に印を付けていくと、壁に対して斜めに入った一本の直線が出来上がる。
カルロスは更に源泉石柱も黒石剣で叩いてみる。すると甲高いキーンッという澄み切った音が鳴る。
ジェッソ「まるで超音波みたいな音だな。」
カルロス「凄いなこれ。こんな音、初めて聞いた。」と言い、再び黒石剣で叩いてキーンッという音を鳴らす。
護「カルさん助っ人ありがとう!じゃあ昴さん、この線よりこっち側を発破で崩して下さい。崩しにくいようならヒビだけでもいいし。」
昴「わかった。」と言って、壁に付けられた印の直線の横に左手を置くと、右手でポーチから鉱石を取り出して、壁に当てる。少しすると、その右手の鉱石がパリンと割れる。と同時に左手を置いた場所から印の直線に沿うように真っ直ぐヒビが入る。
護、思わず「おぉ…。」と感心する。
昴「ヨシ、これは上手く行く!」と言ってそこから少し離れた別の場所に両手を当てると再びポーチから鉱石を出して岩壁に当て、パリンと割ってから岩壁にビシビシと大きな亀裂を入れる。次に昴は屈んで下の方に手を当てるとポーチから鉱石を出して割り、「これで最後!」と叫んだ瞬間。ドゴン!と音がして下から上に向かって亀裂が入り、割れた源泉石の塊が若干下に崩れ落ちる。
昴「ふひぃ…。メッチャ集中した!あとは怪力がツルハシで崩して。」
護「…上手い。」
穣「ナイス昴!」
オリオンも感心して「凄いな…こんな正確に割れるなんて。」
レンブラント「ちなみに壁の方も鉱石で確認しながらやるの?」と護に聞く。
護「いや、壁は最初に合わせたらそのままで。…俺は柱に行くのでこっちの採掘頼みます!」
レンブラント「オッケー。」
穣「よっしゃ採るぜ!」
レンブラントと健と大和はツルハシで亀裂の入った源泉石壁を細かく崩していく。他のメンバーがそれをシャベルでコンテナに入れる。
昴「奥まで砕き過ぎないでね、採るのは俺が崩したとこまでだぞー!鉱脈は残す!」
レンブラント「うん。…昨日と違って砕き易いから行き過ぎちまいそうだ…。」
護とジェッソと悠斗は、石柱に三カ所から斧で切り込みを入れて行く。一撃入れる度に鉱石で叩いて力加減を確認し、どんどん切り込みを深くしていく。
そこへ妖精が一匹現れると、確認の為に叩いて砕いたイェソド鉱石の欠片をポリポリと食べ始める。
ジェッソ「…妖精がメシを食いに来た。」
悠斗「いい朝メシだ!」
一同は作業を続けて、石壁の方は殆ど崩し終わり、レンブラント達はツルハシを置いて、源泉石を入れたコンテナを船に運ぶ作業を始める。一方、柱は三カ所から深く切り込みが入り、残した3点で部分的に繋がる状態となっている。
護は悠斗とジェッソに「この辺でストップ!」と叫ぶと、崩した源泉石をシャベルでコンテナに入れている穣の方に向かって「穣さーん!そろそろ柱を倒すからバリア宜しく!」
穣「了解だ監督!」と言いシャベルを置いて柱の方に来ると「どっちに倒すん?」
護「ジェッソさんの方に。俺が切るから、そっち側で受け止めて下さい。」
ジェッソ「了解。」
穣「んではバリア職人起動!」と言ってバンとバリアを展開する。
護は、柱に入れられた大きな楔形の切り込みの反対側の、少し繋がっている部分の前に立つと、イェソド鉱石でコンコンと柱を叩いてから白石斧を構えて「切るよ!」
ジェッソ達「どうぞー!」
護は斧で一気にガキンと柱の繋がっている部分を切り抜きつつ柱を押す。大きな柱はゆっくりと傾き、穣のバリアで止まる。すかさずジェッソと悠斗がそれを両腕で抑える。
ジェッソ「8採ったぁ!」
悠斗「採ったー!」
護「そのまま船まで運ぶ、ジェッソさん前、俺最後!」
悠斗「俺は助っ人する」
3人は柱を持ち上げそのまま船へと運んでいく。
ジェッソ「タラップ上がるから柱のオシリを」
悠斗は護と共に柱の下を持ち上げつつ「オシリはダイジョブだー!」
皆で柱をタラップから船内へと入れて行く。
すると丁度、貨物室の中から出て来た健とオーカーが柱を見て「うぉ!」と驚いて「壁、取っ払います!」
二人は採掘準備室と貨物室の間を仕切っていた頑丈な壁をスライドさせ、両側に重ねる。
悠斗たちは柱を貨物室の中央のスペースに入れると、静かに床に降ろす。
悠斗「ふー…。」と息を吐くと「後はこれを固定して、石壁の方のコンテナ入れて作業終了かな。」
護「いや、8は採ったけど7採ってない。カルさん7もあるって言ってた。とりあえずその柱の固定お願いします。」
悠斗「ほいほい。」
オーカー「固定バンド持ってきたー!そっち側、留めて」とバンドの片側を悠斗に手渡す。
護「じゃあ手が空いた人は7採り!」と言って貨物室を走り出て行く。
護は船の外に出ると、雲海切りをしていたカルロスに「カルさん、7どこ?」
カルロス「向こう」と言って黒石剣で少し離れた場所を指し示し「行くか。」と言って走り出す。護とジェッソ、オリオンもカルロスに続いて走り出す。遅れて昴がイェソド鉱石を入れた小さなコンテナを持って重たげにノタノタと走って行く。
昴「鉱石、忘れちゃ、ダメ!」
ジェッソ「ああ。」と言って立ち止まり、昴の持つ鉱石コンテナをひょいっと持ち上げると護達を追って走る。
カルロス「あれだ」と前方の岩壁を指差す。岩壁の中腹から地面にかけて、細い源泉石柱が何本も生えている。
護「高さは無いけど密集してるな。」
一同は源泉石柱の所に到着すると、柱を調べ始める。
オリオン「沢山生えてて、源泉石柱の畑みたい。」
ジェッソ「これ、触っただけで折れそうで怖いな。」
護も柱を触りつつ「このままポキンと…はいかないか。コイツ結構硬いぞ、見た目に反して。」
ジェッソ「しかしこんな密集されてると斧でガンとは行けない。」
護「いや待てよ。手でポキン作戦は行けるかもしれない」と言ってイェソド鉱石の欠片を手に取ると、柱の根元を鉱石でコンコンと叩いてから柱の根元を両手で掴んでゴキン!と源泉石柱を折る。
昴「折った!」
ジェッソ「いいのか?」
護は柱の断面を皆に見せて「うん。ほら、ちゃんと合わせると綺麗に折れる。」
ジェッソ「もしやこれを1本1本、手で折って行くという…。」
護「勿論!いっぱいあるから大変だけどやるしかねー!」
ジェッソ「…なんか、斧で一気に刈り取ってしまいたい…。」
するとジェッソの隣で柱に手を当てていた昴が柱を根元で割って「おっ!すぐ割れ目入る!」
オリオンも「俺も根元割り、出来たー!」と採った源泉石柱を両手で頭上に掲げる。
4人が細い源泉石柱を1本1本採っていると、穣や悠斗たちがやって来る。
穣「向こうの作業、終わったぜ…」と言って「なんか畑仕事してるみたいに見えるんだが。」
オリオン「畑仕事です。」
護「だってこれ1本1本根元から採らんと。」
悠斗「よし俺もやろう」と言いイェソド鉱石の欠片を持って作業に加わる。
レンブラント「俺も。」
後から来た他のメンバーは、護達が採った源泉石柱を船へと運ぶ。
護、皆の作業を見つつ「皆サクサクと等級7採っちゃって…。」
レンブラント「昨日の修行のお蔭!」
護「俺、7採り出来るようになるまで相当、鉱石叩きで練習したんだけどな。皆、飲み込み早ぇよ…。」
レンブラント「護の教え方がいいから。」
護「そうかな。」
やがて昴が最後の1本を折ると「これで終わり!」
ジェッソ「やっと畑仕事が終わった。」
護、溜息ついて「これ一人でやってたら相当時間かかったなぁ…。人海戦術万歳!じゃあ撤収だー!」
一同「おー!」
それぞれ石柱や道具を持ったり鉱石のコンテナを持ったりして船へと歩き始める。
ジェッソ、護に「ちなみに7は全部カルセドニーの分だからな。」
護「うん。…これで勝てるといいなぁ…。」
ジェッソ「8のもあげたら、確実に勝てるけども。」
護「でも俺一人だったら、あれ採れないよ。あの8は黒船でここに来て、皆が居たから採れたものだし。…カルセドニーが採れるのは7の柱までだ。それも、俺一人だったらあれを全部採ってる時間無いと思うから、皆が居てくれて助かった、それだけで十分だ。」
ジェッソ微笑んで「そうか。」
採掘メンバー一同は船内に入り、それを確認した護はタラップを上げ採掘口を閉じる。
貨物室で、柱やコンテナがキチンと固定されているか確認を終えたジェッソは、貨物室の扉を閉めて「護監督!貨物室閉じました!」
護はそれを確認すると「よし!あとは戻るだけだー!」と言いつつ階段室へ向かう。
階段を駆け上がって通路を走り、ブリッジに入って船長席の総司に「船長!…ってこっち船長でいいの?」
総司「うん。」
護「採掘口閉じて作業終了しました!」
総司、操縦席に「では出発しましょう、駿河船長。」
駿河「了解!」
黒船はゆっくりと上昇すると、前進を始める。その甲板上には風使い3人と共にカルロスが居て、前方に少し雲海切りをする。
駿河は操船しながら「やっぱデカイ船って操船し甲斐があって幸せ感じます!」
護「カルセドニーも愛して!」
駿河「愛してるけど黒船が懐かしくって久々に操船してる感じがしない。」
護「カル船も愛してー!」
駿河「ところで護さん7は採れたか!」
護「採れたよ、あれだけ採れたら多分恐らく絶対合格出来るんじゃないかなぁと思うけどわっからーん!祈るしかねー!しかし俺はこの一週間、全力で戦ったから、結果はどうあれ満足だー!」
駿河「それはいいことだ!」
護「ちなみに8も採れたけど、黒船が合格できるかどうかはワカラン」と総司を見る。
総司「…黒船も全力で頑張ったから満足ですよ。」
護「それはいいことだ!」
少しして、風使い達とカルロスがハッチから船内に入る。
カルロスはブリッジに戻って来ると、船長席の横に立つジェッソと護の脇を通り、操縦席の横に居る上総の所に来る。
上総、ホワイトボードをカルロスに返して「お返しします。」
カルロス「うん」と言ってそれを受け取ると探知しながら何か図を描き始める。
駿河「やっぱ風使いが居なくなると風の強さを感じるようになるな…。」
カルロス「でもなんか雲海が薄くなってきてたから、もしかしたら…」と言って船窓の前方を見て「前にうっすら壁が見えるだろ?あれ左右の崖が接近してて壁みたいに見える、その両側の崖にこんな感じに結晶が生えてる。」と描いた図を見せて「もし雲海が晴れたら、視認できるから操船し易いかも。」
護「カルさん、その生えてる結晶って何の石?」
カルロス「少なくとも私が知ってる範囲の石じゃないから、ワカラン。」
護「そうかワカランものは探知出来ないんだもんな。そのうちカルさんに鉱石大図鑑を暗記させよう」
カルロス「人を鉱物探知機にするんじゃない。」
駿河「あー…何となく見えて来た、なんだあれは…。」
前方に、左右の崖から黒い結晶が何本もランダムな方向に絡み合うように生えている狭間が見えて来る。
総司「さっき、あんなとこ飛んで来たのか。」
駿河「視界ゼロであれを飛んだの凄いな。…追い風で速度落とせないし、視認できるとはいえちょっとキツイね。」
カルロス「ルート探知してナビするから、頼むぞ駿河船長。」
駿河「了解!」
カルロスは目を閉じてバンと探知エネルギーを思いっきり上げると「では突入まで…3、2、1、…2時、1時、…3時、3時に切ったままで上昇…そこまで。そこで直進。やや降下。」
黒船は、左右の壁から何本も生えている巨大な黒い結晶の間を縫うように飛んでいく。
必死に操船する駿河。その時、総司が船長席で計器をちょっと操作する。
カルロス「…11時へ。10時、9時、10時…で、上昇しつつ1時へ。そのまま直進。」
黒船は黒い結晶の狭間から抜け出て狭い峡谷に出る。
駿河「抜けた」と言うと、ふぅと溜息ついて「出ても狭い…。」
カルロス、探知エネルギーを落としつつ「まぁ視界があるだけマシだ。」
駿河「ちなみに総司船長、さっきそっちで浮力調整したなー?」
総司、焦って「あっ、気づきました?」
駿河「勿論気づくわい!」
総司「その方がちょっと操船がラクかなーって思って、つい余計な手出しを…。」
駿河「流石は現役の黒船船長。的確な判断!」
総司「…昔は貴方に色々指導されましたよ…。」
そこへ上総が大きな溜息をつくと「俺、何でカルロスさんが黒船に居た時にもっと真剣に色々教わらなかったんだろう…。あの時に頑張ってたら今もっと出来たかもしれないのに。」
それを聞いたマリア、ここぞとばかりに「せっかく一緒に居たのにねー!」
上総「こんな凄い事が出来る人だったなんて…。」ションボリ
マリア「え!ちょっとそれどーいうこと?」
上総、天を仰いで「昔の俺のバカヤロー!」
カルロス「まぁ頑張れ」と言うと「まーた曇って来たな…雲海の再来か。そろそろ図を描こう。」と言ってホワイトボードにササッと図を描き「これだ。」とブリッジ内の皆に見えるようにそれを掲げる。
総司「…。」
上総「…。」
ジェッソ「…。」
総司「それは一体どういう指示…。」
駿河「この人、なぜか時々妖精の絵を描くんです。」
護「でも今日のはいつもよりかわいい。」
ネイビー「これで?」
マリア「かわいい…かな。」と首を傾げる。
穣「かわいくはねぇな…。」
カルロス「それでだな」と言って妖精の絵を消すと、再び図を描きつつ「…さっき総司君が操船してる時に妖精を描いてやろうかと思ったが、ブッ殺されそうなのでやめといた。」
総司「殺しはしませんが…。」
カルロス、キチンと描いた図を駿河に見せて「今ここ。」とペンで位置を示しつつ「そのまま2時方向へ…そろそろ6の所だな。」
駿河「一気に雲海が濃くなって来た。風も強いし…」
カルロス「でも昨日みたいに船がフラフラしないから私はラクだ。」
駿河「それでヒマだから妖精を描くんですね。」
カルロス「貴方もヒマだろう?」
駿河「そりゃ昨日に比べたら雲泥の差で!流石は黒船、この暴風でこの安定ぶり!」
護「カル船も愛してー!」
駿河「やっぱりデカイ船は操船してて楽しい。」
カルロス「黒船に再就職するか?」
駿河「そしたらカル船が困るんでは。」
カルロス「…代わりに総司君をカルセドニーに」
駿河「何でだ!」
そこへ穣がジェッソと総司の方に向かって「なぁ。…アンバーの積み荷、本当にそのままでいいのか?」
ジェッソ「うん。」
穣「黒船の分にしたら勝てるかもなのに?」
ジェッソ「…どうだろうなぁ…。アンバーに1本、下が砕けた8があるが、等級落ちするかもしれんし。さっき採った8にしても、護が居なければ採れなかった。つまりそれが黒船の実力という事だ。」
穣「黒船と、アンバーの実力だな。」
ジェッソ「これで黒船だけ合格してもな。…まぁ仮にさっきの8で合格したとしても、アンバーからも何人か大死然に連れて行くさ。…だからアンバーに積んだ分は、アンバーの分でいい。」
穣「とはいえ、最初に採った7の柱と下が砕けた8の柱は、黒船の分にしようぜ。あれは殆ど黒船が採ったモンだし。」
ジェッソ「…いいのか?」
穣「うん。だって採ってないのに貰ってもな。」
ジェッソ「分かった。じゃあ、あの柱は積み替えしよう。」
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