第20章 03
その頃、カルセドニーを見張りながら荒れ地で留守番をしているアンバーのブリッジでは。
セルリアンが操縦席に座って本を読んでいる。そこへリリリリと緊急電話のコールが鳴る。
セルリアンはスイッチを操作してインカムに「はい、アンバーのセルリアンです。」
総司『総司です。あと5分程でそちらに到着しますので、タラップ降ろしておいて下さい。』
セルリアン「了解しました。」
総司『ちなみに船長は?』
セルリアン「…えーと。」と言って船長席の方を見て「今ちょっとブリッジに居ないので。」と言っている間に船長席で寝ていた剣菱が目を覚まして欠伸をする。セルリアン、それを見て「あ。…いや、今、船長が…。」
剣菱「なんかあった?」
セルリアン「…今、黒船から連絡が…。」
剣菱「ああそう。」と眠そうに目をこする。
セルリアン「出ます?通信。…って、また寝ないで船長!…あっ!」と焦る。
総司『寝てたんですか剣菱船長。』
セルリアン「あ、…はい。もぅ起こしますね!ちょっとお待ち下さい。」と言うと立ち上がり、船長席に近づきつつ「船長!起きて下さい!」
剣菱「ん?」と目を開ける。
セルリアン「通信出て下さい!黒船戻ってきますよ!」
剣菱「んー…。」と言ってゆっくりと船長席の机の電話の受話器を取ると「おはよう。」
総司、笑って『おはようございます!』
剣菱「だって早起きして留守番なんだから、そりゃ寝るべ…。」
総司『わかります。とりあえずタラップ降ろしといて下さい。』
剣菱「8、採れた?」
総司『採れましたよ!』
剣菱「よしよし。了解だ。」と言って受話器を置いて通信を切る。
黒船のブリッジでも総司が受話器を置く。
すると穣が「やっぱ、寝てたかウチの船長。」と笑う
護も「まぁ朝早いしな。どこぞの船長も、たまに」と言い掛けた途端
駿河「誰の事かな護さん。」
護「え。」
駿河「そりゃ待機してる時に眠くなる事はありますよ!」
護「う、うん。」
総司は操縦席を指差して、護に「あの船長も寝るんですか。」
護「…俺が7の柱を3時間かけて採った時に寝てた。」
一同「!」驚く
総司「3時間かけて?!」
穣「そっちのがすげーわ!」
ジェッソ「執念だな…。そりゃ船長も寝る…。」
駿河「寝ませんよ普通は!あれは疲れててしゃーない!」
総司「実は、ぶっちゃけ俺なんぞ飛行中に寝てた事が!」
駿河たち「えっ?!」と驚く
ネイビー「寝てたわね…船長席で。」
上総「あれはビックリした…。」
ジェッソ「そんな事が?!」
駿河「マジで? 飛行中に? 総司君が?」
総司「もうね…管理に毎日毎日責められまくって精神的に疲労困憊していたので…。」
一同「…。」
穣「…どんだけ管理に…。」と呆れる。
駿河「そんな事がー…。」とクッタリする。
カルロス「…まぁアレだ。カル船は船長使いの荒い船なので船長が疲れて寝るのはしゃーないが、管理が黒船船長を破壊するのは、危険だから止めて頂きたい…。しかしカル船も、もっと船長を大事にしないとイカンなー。」
駿河「俺は大事にされてますよ。…全くもう管理さんは…。」と溜息つくと「とにかくそろそろアンバーと合流だ!」
カルロス「じゃあ雲海切りに行きます。」と言いつつホワイトボードと黒石剣を入れたホルダーを持ってブリッジから出て行く。
黒船は雲海の中で停止する。と同時に船底の採掘口からカルロスが飛び降りつつ黒石剣で周囲の雲海を薙ぎ払う。
バッと視界が拓けて荒れ地に停まっているアンバーとカルセドニーの船体が現れる。黒船はゆっくり船体を降下させると、三隻が三角形の位置関係になるように、アンバーとカルセドニーの前に着陸する。その間にカルロスはカルセドニーの貨物室の扉を開けて、中に入る。
黒船はタラップを降ろし、護とジェッソ達が等級7の柱を全て運び出してカルセドニーの貨物室にそれを積み込む。
穣たちアンバーメンバーは黒船を降りてアンバーへ行き、アンバーの貨物室から黒船が採った等級7の柱と、下が砕けた8の柱を運び出して黒船に積み替える。黒船のメンバー達が柱を固定し積み替え作業が終わろうとしたその時。
ジェッソ「よし、じゃあ貨物室を閉め…」
穣「ちょい待て!」
ジェッソ「ん?」と穣の方を振り向くと、アンバーのメンバー達が揃ってジェッソの方を見ている。
穣「このままじゃスッキリしねぇ!」
悠斗「そうだ!アンバーはな、黒船を合格させる為に一緒にやるって決意したんだ!」
オリオン「それでここまで全力でやって来たんです!」
マゼンタ「そうだそうだ!」
透「まだ、時間に余裕は十分ある。」
穣「だから、アンバーの積み荷、全部受け取れー!」
ジェッソ達「…!」驚く
穣「これからアンバーで預かってた積み荷を全部持って来るから、まだ貨物室閉めんな!…行くぜアンバーズ!」と言ってタラップを駆け降りて行く。アンバーズもそれに続く。
レンブラント慌てて「待った!しかし!」
昴「アンバーがゼロに」
すると1人だけ残ったマゼンタが一同の前に立ちはだかると「皆が積み荷を持って来るって言うんだ、括目して待て!」
昴、思わず笑いつつ「括目て!」
夏樹「そりゃビックリして、もう括目してるけど!」
マゼンタ「その代わり、いつか俺を大死然とか面白そうなとこに連れて行けー!ちくしょー8採り行きたかったぁ!」
ジェッソ「わかったわかった。」
レンブラント「必ず連れてってやるから!」
マゼンタ「その言葉、忘れるなよ!…よし交渉成立!」
その頃、ブリッジでは。
駿河「さて、名残惜しいけど、そろそろ行くか。」と言い操縦席から立ち上がって「ネイビーさん、交代です。」
ネイビー「はい。」
マリア「私もアンバーに戻ります。じゃあね、上総君、ネイビーさん…ってなんか変な感じ!」
ネイビー笑って「そうね。」
マリア、総司に「では失礼します!」と言うとブリッジ内の皆に「皆、またねー!」と手を振る。
総司「…ありがとう。」
駿河も「久々の黒船船長と、操船楽しかった。ありがとう皆。」と言うと、総司に「この制服は後で返すよ。…総司…。」と言って何か言いたげに思案して少し言葉を切る。
総司「はい。」
駿河、微笑んで「…よく、頑張ってきたな…。」
総司「…。」ちょっと驚いたように目を見開く。
駿河「では、また!…行こうマリアさん」
マリア「はい!」
駿河はマリアと共にブリッジを出て通路を歩いて行く。
総司はそれを見送ってから、ぽつりと呟く「…あの人のお蔭だ。」
すると上総が溜息ついて「なんかブリッジが寂しくなった…。」
ネイビー「今まで賑やかだったしね。それにしても駿河船長って随分変わったわよねぇ…。あんな面白い人だったかなぁって。」
上総「うん。」
総司「…あのままずっと黒船船長やってほしい…。」
ネイビー「それはダメよ。総司船長も大事だもん。」
上総「うん。総司船長も大事。」
総司「そうか…。まぁ、そうだな…。」
マリアと駿河が階段を降りて採掘準備室に入ると、黒船メンバーとアンバーズが向き合って何かを話している所だった。
穣「よぉーし、これで黒船が勝っても負けても悔いはねぇ、スッキリ眠れる!」
マゼンタ「安眠快眠!」
ジェッソ「ありがとうアンバーズ、この恩は一生忘れない!」
そこへ駿河が「何かあったの?」
マゼンタ「アンバーの積み荷を全部黒船にあげた!」
ジェッソ「アンバーの愛を頂きました。」
駿河「あ、愛…。」
穣「だってアンバーに少し残して黒船が負けたら悔いが残っちまう、ここはスッキリさせた方がいい!…って事で、ケセドへ行こうぜ、戻るぞー!」
マゼンタ「結果発表だー!」
悠斗「ドキドキするなぁ。」
マリア「ワクワクだね!黒船頑張れ!」
アンバーズ一同はタラップを駆け降りて行く。
駿河も「黒船受かるといいなぁ…。」と言うとジェッソ達に「それではまた!」と言ってタラップを駆け降りて行く。
その駿河の背中を見送りつつ、レンブラントが「…あの人に、あの制服で去って行かれると、なんか寂しく感じるな…。」
ジェッソも寂し気な笑みを浮かべて「まぁな…。」
やがて三隻の船は、カルセドニー、黒船、アンバーの順に荒れ地から飛び立つと、カルセドニーを先頭に、ケセドに向かって雲海の中を飛んでいく。
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